許せないのは誰?

初めてそのイヌを見たのはまだ覚えたてのパソコンの中でだった。当時国内には数十頭しかいない犬。顔付きは堂々としており写真だけで見れば中型犬のような雰囲気を持ちつつも、実際は5キロ前後と小さな黒い犬。

人生でシャンパンタワーの次に大きな出費となった(心底嫌な表現だね)わたしの可愛い犬。今年で9歳になった。人間で言えば丁度わたしの母と同じくらいだ。

まだまだ老年期の兆候の影は薄いが、明らかに性格が丸くなったしあのツヤツヤ真黒の被毛にチラホラと白い毛が見られるようになった。

他の犬を厳しく指導したり、目敏く食べ物を引きずり出しては盗むところなんか何一つ変わっていない。なのに、わたしを置いて駆け抜けていってしまう。

イヌが、またはネコが死ねばその形に穴が空く。正確には花宗型の穴が。その穴は再びイヌを飼おうが埋まる事なんかなくて、ただそこは一緒に過ごした温かな記憶で満たされる。その先の人生も穴の中で揺らぐ温かいものと一緒に過ごし、また会いたいなァなんて思いながら死んでいくのだろう。

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